ニックの選択肢(1) – シミュレーションは技術的に不可能

世界をシミュレーションできる技術

ニックの1つ目の選択肢は、

「すべての生命体は、現実と区別がつかないほどのシミュレーションができる技術を開発できない。」

というもの。

確かに、世界をシミュレーションするなどということは、我々には全く想像できないほど大変なことだろう。

よくあるシミュレーションゲームのような、キャラクターを動かして、街を作って、お金を稼いで・・・というものとは全く異なる。

まずこの世界全てをシミュレーションするということは、この世界にある原子(さらにはもっと小さいもの)をすべてシミュレーションする、ということだ。

果たしてこの世界には原子はいくつあるのだろうか。

例えば人間の体で考えてみよう。

我々人間の体は約60兆個の細胞でできている。

そして、1つの細胞は約1000兆個の原子でできていると言われている。

つまり、1人の人間を表すだけでも、最低60兆 × 1000兆 個の原子を再現しなければならない。

もちろん人間は細胞だけでできてるわけでもないので、もっと莫大な数になるだろう。

その人間がある1つの星だけでも70億人いて、他にも数え切れないほどの様々な生物、有機物、無機物が存在して、さらにはそれらを毎秒毎秒動かさなければならない。

到底理解できないような、果てしない量のデータを扱うことになる。

そう考えると世界のシミュレーションなど不可能だ、と思うかもしれない。

しかし近年の技術革新の速さは驚くべきものである。

技術は急激に進歩している コンピュータの性能は指数関数的に向上している。 一般家庭にパソコンが普及し始めたのはWindows...

最近では量子コンピュータの研究も進んでおり、もし開発されればコンピュータの処理能力はなんといきなり1億倍に向上すると言われている。

この量子コンピュータの例のように、技術は線形的(一定の割合で向上)ではなく、飛躍的な向上をする場合もあるのだ。

しかも最近、宇宙の138億年の歴史をわずか3ヶ月でシミュレートする宇宙シミュレータ「illustris」が実際に開発された。

コンピュータが発明されてからわずか数十年で、実際に宇宙がシミュレーションできるレベルにまで達したのである。

さらに言えばこの宇宙には、それこそ果てしない空間があり、さらには果てしない時間が流れている。

それどころか、宇宙の外があるかもしれないし、そもそもここがシミュレーションされた世界ならば別の世界があるということになる。

どこかで世界をシミュレーションできるほどの、莫大なデータを扱えるコンピュータが開発されていてもおかしくはないのではなかろうか。

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コメント

  1. Asian ba ba より:

    我々、人類が設計者にいたずらすることは可能でしょうか?

    • 管理者 より:

      ゲームの中のキャラクターがゲーム開発者にいたずらできないように、我々人類も設計者にいたずらすることはできないのではないでしょうか。
      ただし、我々の世界でのゲームとは異なり、我々は進化することができる(そのように感じている)ので、もしかしたら設計者に干渉する術を持つこともあるかもしれませんね。